もう一度、恋を灯して、消さないで

あれは中学三年生の夏頃。



夏休み明け集会が行われた日のことだった。



『白崎くんは家の事情で転校してしまいました』



担任がクラスメイトたちにそう告げた瞬間、鈍器で殴られたかのような痛みが走ったのを覚えている。



みんながざわつく中、一人呆然としていた。



白崎 流星…もとい私の彼氏は、彼女の私にもクラスメイトにも転校することを告げずに地元を出ていったのだ。



私に暗黒時代があるとするならば、きっとあの頃だろう。



その日を境に、私の世界は一変した。



目に映るもの全てが灰色に染まり、色が消え失せ、どうしようもない現実にひたすら絶望した。



ちょうど夏休みが終わる前日に、スマホの機種変をしたのが運の尽きだったんだろうな。



引き継ぎを失敗した挙句、連絡先が全て消えた。



そのときは「明日学校で話せばいいか」と思っていたけれど、その時にはもう流星はこの街にいなくて。



次の日私は、“当たり前”が当たり前ではないことを知ることになる。



そんなことがあってから約二年が過ぎ、やっと心のつっかえがとれてきたと思っていた矢先のこと。



「…二年ぶりだね。元気してた?」



まさか、こんなところで再会するなんて夢にも思わないでしょ。
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