女騎士と大賢者の結婚

プロローグ

 さて、ここは女王陛下があらせられます宮殿。そこへ火急の報せを受けた者等が駆けつける。
 まず金色の鎧に身を包み、同色の髪をなびかせる騎士団長セミラ。それから夜闇のごとき外套を纏う大賢者ミレトス。

 二人は陛下の御前で片膝をつくと忠誠を示す。

「女王陛下、ご機嫌麗しゅうーー」

「はっ、呑気に口上を述べている場合か? これだから賢者殿は困る」

 ミトレスの言葉を遮り、セミラは呆れた風に目を伏せた。結局のところ賢者は官職で媚びへつらうばかり、そうしっかり顔に書いてある。

「礼儀を忘れた狂犬に言われたくありませんね。先日のモンスターも力で捻じ伏せたとか? 過ぎた力は正義ではなく暴力ですよ」

「1の指摘に対し10返すのを知性と勘違いしている貴殿にこそ、言われたくないな」

「いい加減になさい! あなた達は顔を合わせれば諍いばかり」

 横並びで牽制し合う様に正面の女王は肩を竦め、割って入る。

「騎士は正義、賢者は知恵」

 一旦間を置き、携えた祝福の杖で交互の使命を促す。

「お前達は私の翼である以前に民の手足となり、この地に安寧をもたらすのが本分であろう」

「それはーー」

 思わず口を開きかけたセミラを、今度はミトレスが遮った。

「お言葉ですが、女王の加護によりモンスターの数も減る昨今、騎士団存続理由は如何ほどかと。数を増やした犬はいつしか野良犬となり牙を剥くやもしれません」

「なっ! 貴殿こそ研究だと言っては追加の予算を申請してばかりじゃないか! 一体幾ら注ぎ込めば高尚な術が完成するのだ?」

「お止めなさい! わたくしの話を聞いてないのか? お黙りなさい!」
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