女騎士と大賢者の結婚
 魔術研究は金がいる、なにより時間がかかる。生活を豊かにする術を編み出しても、人々はあっと言う間に便利に慣れて更なる術を求めた。

「騎士みたいに分かりやすく手軽な成果を我々は見せられないから、どうしても根回しが必要になる。金を出してくれるなら世辞など幾らでも言うさ」

「その騎士団もモンスターの数が減り、祭りの警護や畑の収穫の手伝い、夫婦喧嘩の仲裁までさせられるみたいだよ」

「夫婦喧嘩……くくっ」

 珍しくミトラスが声を出して笑う。

「あんな大層な鎧を所持しているのに、騎士殿も辛かろう。いっそ、あれを着て祭りの仮装大会に参加すればいい。優勝するんじゃないか?」

 魔法により壁にぶつかり割れたカップが元通りになっていく。汚れた床もきれいになった。

「あまり女騎士をいじめない方がいい。奥様なんでしょ?」

「形式だけの、な。陛下も無駄なことをなさる。魔術師と騎士が分かり合えるはずない」

「御主人様は騎士だけじゃなく、他の魔術師とも分かり合えてないけどね。研究を手伝って貰った方がいいんじゃない? 1人で何もかもこなすのは大変だよ」

「ーーはっ、減らない口数だな。さっさと見張りに戻れ! 騎士団に怪しい動きがあればすぐ教えるんだぞ」

 至極真っ当な言い分を展開する使い魔を追い払う、ミトラス。
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