女騎士と大賢者の結婚
 首都エキザカムは大国として世に知れ、歴代女王が統治してきた。
 72代目女王の冠をいただくヘリオトープのもっぱらの悩みといえば騎士団と賢者の確執。

 ミレトスの言う通り、人に害をなすモンスターが駆逐されつつある中、騎士団の価値が問われる。またセミラの言い分も的外れではない。魔術への対価も問題視されていた。
 つまり、ヘリオトロープは己の翼と表現した組織改革を求められているのだ。

 コンッ、ヘリオトロープは杖で床を叩く。
 モンスターの脅威が完全に無くなった訳でもない。悲しいかな、人の敵は人であるとは歴史が証明する。

「女王の名において騎士団セミラ、大賢者ミレトスに命じます」

 火急の報せと芝居を打たねば、両者は同じ空気を吸うのさえ拒む。
 となればーー。
 ヘリオトロープは覚悟を決めた。

「これより両名は夫婦となり、手を取り合うのです」

 このお話は犬猿の仲とされる騎士と賢者が結婚する話である。

 女王の命から少しして辺りに不満がこだまするものの、ちょうど正午を告げる鐘の音により掻き消された。
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