女騎士と大賢者の結婚
「隊長、後は我々に任せて。仮装大会に出られるんでしょ?」

「あ、あぁ」

「大丈夫、自由行動中でも何かあればすぐ対処します。それより賢者様は何をなさっているのか? まったく良いご身分だ、女王のお言葉も聞きに来ないで」

 副団長はセミラに指揮権の譲渡を促す。

「ーーぷっ」

 セミラには女王の話を聞かず、鏡と向き合う賢者の様子がありありと目に浮かぶ。

 花嫁衣装を着こなそうとする姿を思って、吹き出す。完璧主義ゆえ、街で一番愛らしくならねば納得しなそう。

「隊長?」

「なんでもない、私も大会に出る前に身形を一度整えるか。それではよろしくな」

 セミラは副団長の叩き、大会の控室へ向かう。
 受け付け開始までもう少し時間があるので、仕上げてくるであろう花嫁の隣へ立つ準備をすることにした。

「……あの隊長が身形を気にするなんて」

 そんな副団長のつぶやきはセミラに届かない。
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