女騎士と大賢者の結婚
「好ましいって、いや、その、犬や猫に対するような感情じゃないのか?」

「犬や猫、使い魔よりも金獅子がいいですね。そろそろ観念して目を開けたら如何です? 僕がどんな顔してこんなことを言ってるのか、確かめてみては?」

「……」

 確かにミトラスの顔を見てみたい。セミラは睫毛を震わせ目蓋を開きかけ、やはり閉じておく。

「ほぅ、口付けの前に目を瞑り直せてお利口さんですね」

「……女王が教えてくれたんだ。惚れ薬の効果を打ち消す方法は口付けだと」

「はは、陛下らしい助言で。しかし断言します。僕と口付けすると惚れ薬の効果を打ち消すどころか、もっと僕を好きになってしまうでしょう。試してみますか?」

「挑まれたら受けて立つ、それが騎士だーー元騎士になるかもしれないが、いいのか?」

 挑発を挑発で返す。

「誰がなんと言おうと貴女は僕の騎士。僕の知略をもって貴女を守りましょう」

「守られるだけでは不満だな。私も貴殿を護りたい」

 誓いを立て、2人は最初は軽く唇を重ねる。それから腕を回し合い、深く確かめていく。

「貴殿とこうなるとは。したり顔の陛下の顔が浮かぶな」

「悔しいですか?」

「全く。むしろ感謝をしたいくらいだ。貴殿は?」

「僕は少し捻くれてますのでね。今度、陛下の御前で痴話喧嘩をしてみましょう」

 ちなみに愛を囁きあうこの場にはミトラスによって結界が張り巡らされていた。
 つまり、団員がセミラを救出したくとも立ち入れない。

「おい、カラス! うちの団長は無事なんだろうな!!」

「団長に何かあったら許さないぞ!!」

 結界の外ではミトラスの使い魔が詰め寄られており、カァカァ鳴き声を上げている。
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