心霊物語 街の怪異

第一話 クローゼット

私、成海奈々は、お父さんの仕事の都合で、高校二年生に上がるタイミングで、引っ越してきた。

小さい頃に一度住んでいた街で、懐かしさを感じた。

けれど、それと同時に嫌な記憶も思い出した。

この街は、とても霊が多いのだ。

特に病院や学校などは人が多く集まっているので、悪霊も多い。

私は気を引き締めて、新居へと向かった。

新しい家は、とても綺麗だった。

何ヶ所かリフォームできれいにしてもらったとお父さんが言っていた。

私はさっそく2階にある自分の部屋に上がった。

前に住んでいた部屋よりずっと広かった。

私の荷物はすでに私の部屋まで運ばれていた。

ダンボールから小説やマンガを出して本棚に並べた。

一通りダンボールから荷物を出して片付け終わった。

最後に、クローゼットに服をしまっていった。

クローゼットは奥行きがかなりあった。

奥まで入って見ると、引き戸のような物があった。

こんなところに小部屋でもあるのだろうか?

私は好奇心に負けて、引き戸を開けた。

中は小さな小部屋になっていて、小さい子が一人は入れる広さだった。

私は頭をぶつけないように気をつけながら、中に入った。

入ってすぐに何か硬いものを踏んだ。

「いたっ」

思わず声を上げた。

私はポケットからスマホを出して、ライトをつけた。

足元を照らしてみると、赤いクレヨンだった。

なんでこんなところに?

壁も照らして見ると、私は言葉を失った。

壁には、子供が書いたような字で、こう書かれていた。

『お母さん、ごめんなさい。ここから出して』

それが壁一面に書かれていた。

私は急いでその部屋から出て、引き戸を閉めた。

何も見なかったことにして、服をクローゼットにしまった。

気晴らしに、出かけることにした。

靴を履いて、玄関を出た。

外は桜の花びらがたくさん落ちていた。

まるで桜の絨毯の上を歩いているようだった。

私の家の近くは住宅街で、左隣には一軒家が、右隣にはマンションがたっていた。

私はなんとなく、このマンションからよくない感じがするのを感じた。

何か、人の気配がしない感じがするのに、誰かいるように感じたのだ。

「君、マンションなんか見て何してるの?」

突然、声をかけられた。

驚いて振り向くと、私と同い年くらいの男の子が立っていた。

「もしかして、今日引っ越してきたの?」

「はい。あの家に」

私は白い大きな家を指差した。

「俺は、隣の家に住んでる桐ヶ谷弘人。よろしく」
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