きっと散りゆく恋だった
分かってるよ。だから、わざわざ言うな。
そんな私の小さな抗議は届くはずもなく、口を開くことさえできないまま、ただ呆然と私はその場に立ち尽くしていた。
おかしい。完全に立ち直れたと思っていたのに、長い間抱いてきた恋慕の情はなかなか根絶えてくれないらしい。
ああ、本当に厄介だ。
相手に言われてしまうよりは、自分で言葉にしたほうが楽かもしれない。そう思ったから、口にした。
「末治さんは、彼女とデートですもんね」
「そーなんだよ」
ぐ、と握った拳に力が入る。
やめて、やめてやめて。私はそんな顔見たくない。
私の前で別の子を想うのだけは、本当にやめて。そんな思いすら目の前の男には届いていないのだと思うと、むなしくて、やるせなくて、同時にそんな彼だから好きだと思った。
昔から鈍感で、不器用なくせに、決めたことは最後までやり遂げるやつだから。曲がったことが嫌いで、とにかく優しいやつだから。浮気の心配はまずないだろう。私が必死になって言い寄ったところで無駄だということを、私がいちばん知っている。
どんなに綺麗な学年一の美女が言い寄ったところで、結果は私と変わらないことも分かっている。
だからこそ。
そんな揺らぎのない彼だからこそ、私は好きで好きでたまらないのだ。