きっと散りゆく恋だった

「楽しんでね」

「そーなー。楽しむつもりではあるよな」

「ニヤけてるよ、キモチワルイ」

「しょーがねえよな、好きなんだからさ」



 私の八年間の片想いは、彼と彼女のデート現場を目撃したことによってあっけなく散った。高校二年生になって出会った、可愛らしくも控えめな女の子の登場によって、粉々に砕けちった。
 せめて「彼女ができた」と報告されたとしたら今よりもすんなり受け入れることができたかもしれないのに、よりによってまったく身構えていない時に大失恋をかますことになるとは思いもしなかった。

 正直、心のどこかで彼はなんだかんだ私のことが好きで、私を選ぶのだと思っていた。だって近所の人たちには「ほんとに仲良いわね」と言われていたし、小さいころには結婚ごっこもしたわけで。「おおきくなってもずっといっしょにいようね」と手紙に書いたことだってあったから、てっきり大きくなって自然と付き合って、なんとなく結婚して家庭を築くのだと思っていた。

 それなのに、なんだこの有様は。
 自分が描いていたものは所詮、すべてが妄想だったのだと悟り、今までにない羞恥と憤りに襲われている。


「ばいばい末治さん」

「それは直さないのなー」

「当たり前でしょうが彼女持ち」

「そうでしたそうでした」


 家の前まで送ってくれるのも、これからはもういいよって断らなきゃダメかな。
 あーあ、サイアク。


 二人の間に入ってどうこうしたいわけじゃない。そこまで恋愛を拗らせてはいないはずだし、他人の不幸を願うなんてまねはしたくない。だけど、抑え込んだこの気持ちが自然と昇華されるかといえば、それはまた別の話だ。
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