きっと散りゆく恋だった

「祭りの日なんて来なければいい……」


 ドアの先に、きっともう彼はいない。私がドアを開けたところで、あるのは蒸し暑い夏の景色のみ。

 彼と行かない夏祭りなんて、まったく意味がない。
 浴衣を着たって、美味しいものを食べていたって、花火を見ていたって、ずっと考えるのは末治リョウという男のことだけだ。


「あー……くやしい」


 悔しいくやしいと嘆きつつも、なぜだか涙はあふれてこなかった。










 結局、夏祭りには行かないことにした。年に一度の大きな祭りだから、たくさんの花火があがるらしい。数にすると一万発をこえるとチラシに大きく書いてあった。

 私以外の家族は皆祭りに行くと言って、早々に家を出て行った。両親は毎年のごとく二人でデートだし、三人いる姉は全員が彼氏とデートだ。みんな三年以上の付き合いだから、こちらも毎年のごとくといった具合だ。


 ……結局私だけが残り物だ。なさけない。



 家にいてもとくにすることもなく、暇つぶしに開いたインスタには楽しげなストーリーばかりが載っていて気分が滅入り、すぐに閉じた。かといって課題をする気分ではない。

 私は仕方なく、近所の公園に行くことにした。


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