君のカラダに触れたい

呆然としている黒百合さん。

「望んでないなら尚更です。黒百合さんには、今の黒百合さんが1番似合う。」


こんなに華奢で、か弱そうな女性に、そんな残酷なことさせられるわけがない。



聞いたことがある。



幽霊が悪霊になったら、元の性格や理性、感情全てを失って、憎しみだけが残ると。




「綺麗で、真っ直ぐで、感情豊かで、人を笑顔にできる明るさがあるところ。

あと、声とか動きがうるさい、ばかっぽいところも。俺は絶対に捨てさせません。」


俺より10センチくらい低い位置にある、黒百合さんの頭に、手を滑らせる。


上目遣いが、なんとも愛おしい。



「ばかって…。もー!大丈夫だよ!どうにかして、家族の敵を取らないと」


少しはにかんで言う黒百合さん。


「なんで黒百合さんがその役目を背負わなきゃいけないんですか?」


上目遣いしている黒百合さんの目に、俺の目をぐっと近づける。


「どっ、どうしてって…」


戸惑って目線を外す黒百合さんに、無理やり目線を合わせる。




「黒百合さんが悪霊になるくらいなら、俺がやります。」

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