ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
「……ねえ鞍馬くん。私のマフラー、つける?」
私にしては勇気を出して提案したことだったけど、鞍馬くんは私を見てすぐに首を振った。
「大丈夫。俺より夕夏の方が寒そうな格好してるし。逆に俺のてぶくろ貸そうか?」
「いや、いいよ。大丈夫」
本当にてぶくろを貸そうとする鞍馬くんに、私は慌ててそう言った。
こっちが貸そうとしたら、逆に貸そうとしてくるから困ったものだ。
鞍馬くんっていまいち掴めない人だな……。
ふう、と息をついて、私は頭上に広がる空を見上げた。視界一面、どんよりとした雪雲に覆われている。太陽の光なんて少しも差していない。
そんな寂しい空を眺めながら、思う。
鞍馬くんはどうして、出会ったばかりの私にあんな告白をしてきたのだろう。
今更な気もするけれど、考えずにはいられない。
きっと半端な気持ちで告白した訳ではないと、これまでの会話を通して断言できる。
鞍馬くんは人懐っこくて、穏やかで、人を騙すような人じゃない。だって鞍馬くんの私を見つめる瞳はまっすぐで、とても誠実な色をしていたから。
それだけの理由で断言するのはまだ早い気もするけれど、今はそれでよしとしよう。