ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい


「鞍馬くん。これからもっと寒くなるんだから、防寒はしっかりね」

「ええ、これ以上寒くなるのかあ……。やだな」


隣で、鞍馬くんがぽつりと愚痴った。


バス停までの道には、私と鞍馬くん二人だけの足跡が雪の上に綺麗にくっきりと残っている。


どこまでも続く雪道は、ふわふわとした雲のように淡い白で色づいていた。


「──あ、バスが来たよ」

「わ、ほんとだ。やっと来たね」


安堵した声が隣で聞こえる。遠くの方から、バスの小さな明かりが見えてきた。


もうすぐでバスのタイヤにぺしゃんこにされてしまう、夜明け前に深々と降り積もった雪たち。


そこに、私たち二人分の足跡が連なって刻まれている。


まるでその足跡は、楽譜の中にある沢山の音符のようで。


どこからか、軽快な冬のメロディーが聴こえてくるようだった。

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