ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
崩壊する日常
最寄りのバス停に着いたバスから降りて、鞍馬くんと一緒に学校までの道のりを歩く。
学校に近づくにつれ、登校する生徒の姿がちらほらと見えてきた。私はその光景を見て、鞄を持つ手に力が入った。
私みたいな普通の女子がイケメン高身長男子と歩いているところを注目されたらどうしよう。
そんな不安は杞憂に終わらず、心配していたことが実現してしまった。
さっきから私たちの横を通り過ぎていく生徒が鞍馬くんのことを二度見して登校していく。
こちらに視線を向け、顔を寄せ合って何かを話している女の子たちもいる。
注目されることが苦手な私からしたら、この状況はかなり耐え難かった。
「それじゃあ俺、職員室行かないといけないから」
学校に着き、真新しい上履きに履き替えた鞍馬くんがちょうど上履きを履き終えた私にそう声をかけた。
「うん、分かった。じゃあね」
鞍馬くんの去っていく後ろ姿を数秒眺めて、私は自分の教室に向かった。
❆
教室では登校してきたクラスメイトたちがそれぞれグループになって楽しそうに話している。
私は荷物を置いて今日の時間割に沿って教科書を机の引き出しに入れ、友達が二人で話しているところに行く。