ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
「でさー、昨日お父さんが急にダイエット始めるとか言い出してさ。ユーチューブ見ながら何したと思う?」
「え、普通に筋トレとかじゃないの?」
「ノンノン、実はね、まさかの踊り始めたの!」
「えっ、あははっ。何それ面白すぎるんだけど」
なかなか会話に入るタイミングが掴めなくて、私はぎこちない表情を浮かべながらやっと二人に挨拶をした。
「おはよ~」
私に視線を向けた二人は、「おはよう」と返してくれた。でも、それで会話は終了。
自分から引き出せる面白話なんて私にはなくて、二人が話している会話を黙って聞いていた。
自分の席に戻り、机の上に一時間目の教材を並べていると、一番仲の良い葵が話しかけにきてくれた。
「夕夏~、おはよ」
「おはよう」
私は笑顔でそう返す。
「昨日私何時に寝たと思う?」
眠そうに目を擦りながらそう質問してくる知夏を見れば答えは明解だ。
「どうせまた三時くらいに寝たんでしょ」
「うん正解~! てか今日一時間目何?」
「えっとね、古文だよ」
「えー古文かあ。でもまあ、内職できるから良いね」
「もしかして数学の宿題終わってないのー?」