ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
私はほぼ分かりきった上でそう訊く。知夏はうんと頷いた。
何気ない会話を交わしていると、担任が教室に入ってきて、皆それぞれ席に着いていく。
「今日は皆さんに紹介したい子がいます」
担任の葉月先生の言葉に、クラス内がわっと湧いた。
「鞍馬くん、入ってきて」
先生が手招きすると、教室の前方扉から身長の高い鞍馬くんが姿を現す。
私はそこで初めて、鞍馬くんと自分が同い年だったことを知った。
クラスメイトたちのざわめきはより一層大きなものになる。クラスの女子生徒たちが黄色い歓声を上げ、鞍馬くんのことを恋する乙女のような視線で見つめていた。
教卓の真横に立った鞍馬くんは、黒板に端正な文字で自分の名前を書いていく。そうして向き直り、教室全体を見渡して言った。
「えーっと、色々あってこの高校に編入することになりました。鞍馬絢斗です。今日から何かと迷惑をかけるかもしれませんが、ぜひ仲良くしてくれると嬉しいです」
鞍馬くんはそう言い終わった後、口角を上げて爽やかに微笑んだ。
その笑顔にきっとクラスの大半の女子が恋に落ちたんじゃないかと思うほど、客観的に見ても鞍馬くんは格好良かった。