ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
「それじゃあ、鞍馬くんの席は篠田さんの隣の席になります。鞍馬くん、自己紹介ありがとう」
鞍馬くんは先生に頭を下げて私の方に近づいてくる。隣の席に荷物を置く音が聞こえた後、鞍馬くんが他の誰にも聞こえない声で、無邪気な笑みを浮かべて言った。
「やったね、夕夏の隣ゲット」
❆
一時間目から四時間目までを受け終えて、昼休みに入った。鞍馬くんは毎休み時間ごとに沢山の人に囲まれ、忙しそうにしていた。
鞍馬くんは大変だろうけど、みんなの前で話しかけられる心配がなかったから私としては安心だ。
私は普段仲良くしている三人と、それと未だに仲良くする方法が分からない宮崎さんと一緒にお弁当を食べる。
私たちはいつも二つの机をくっつけて、そこで五人椅子を寄せ合って昼食をとっているのだ。
昼食をとり終わると、今度は女子トークに入った。そこでは鞍馬くんの話も出てきたりして、私は少しドギマギしてしまったけれど、上手くそれを隠す。
トーク力満載の知夏の話に笑い、時折自分の話もしながら昼休みを終えた。
放課後になると、私はそのまま部室に向かわなければいけない。
隣の席の鞍馬くんに話しかけられる前に席を立ち、帰りの準備をしている知夏の所に行く。