ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
第一章
夜明けの雪唄
202◯年12月1日 90/90
「ゆうちゃん、今日も学校頑張ってきなね」
「うん」
祖母の穂の温かい手に背中を押されて、私の重たい体は家の外へ追いやられた。
学校、嫌だなあ……。
私は心の中で情けない愚痴をこぼす。
「それじゃあ、行ってきます」
おばあちゃんを振り返って言った。
「はぁい、いってらっしゃい。気をつけて帰っておいでね」
「うん、分かった。寒いのにいつも見送りに来てくれてありがとねおばあちゃん」
「いえいえ。ゆうちゃんのためなら、ばあちゃんは何だってするよ」
おばあちゃんは私をゆうちゃんと呼ぶ。その優しい響きが私は昔から大好きだ。
「はは、それは嬉しいな。でも、無理しない程度にでいいんだからね」
「ふふ、はいはい」
おばあちゃんは口に手を添え、しわくちゃな笑顔で私を見送ってくれた。
深々と降り積もったまっさらな雪を踏み続ける。今日はいつもより雪が深く降り積もっている。膝丈あたりまであるほどだ。
山を下り、バス停へ向かう途中、ふと吐いた息が真っ白なことに気づいた。生温かいそれは冬の凍てついた空気に瞬く間に溶けて跡形をなくす。