ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい


袴に着替えて弓道場に戻り、自分の弓と弓矢を手に取って先輩の隣に並ぶ。

お互い無言で弓を引いていると、部活仲間たちが次々と部室に入って来る。


「お~、さすが全日本弓道大会の代表選手たち~。絶対に優勝勝ち取ってくれよな!」


弓道部の部長である橘先輩が大股で近づいてきて、私と澤矢先輩の背中をバシンと叩く。

相変わらず力の強い人だ。


「先輩、痛いですって……。でも、まあ、大会までの練習期間、一生懸命頑張ります」


自分より頭三つ分ほど身長の高い橘先輩を見上げ、そう言った。


「ああ、まじで応援してるぜ」


橘先輩はそう言ってガッツポーズをして見せた。真面目なのかふざけているのかいまいちよく分からないけど、まあいい。


「ほら、橘くん。そこにいたら夕夏ちゃんが練習再開できないから早く着替えてくれば?」


澤矢先輩が爽やかスマイルで結構辛辣なことを言う。橘先輩は見事にその言葉にダメージを受け、「お、おう……了解したぜ」と男子用の更衣室に去って行った。


部活が本格的に始まると、先輩が後輩に弓矢を引く時の基本的事項を教えたり、各自練習したりする。


集中して弓矢を放ち続けていると、いつの間にか部活終了の時間になっていた。

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