ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
だけどこれは、恋に落ちたとかそういうことじゃない。絶対に違う。
自分に言い聞かすように、私は心の中でそう唱え続けた。
❆
12月2日 89/90
火曜日の朝。私はおばあちゃんと一緒に雪かきならぬ霰がきをしていた。
昨日の夜のうちに降り積もった霰は塊になるとより固くなり、シャベルで道を作るのが大変だった。
「ゆうちゃん、お疲れ様」
家の中に戻ってこたつで暖を取っていた私に、おばあちゃんが温かいお茶を淹れてくれた。
おばあちゃんから差し出された湯呑みを受け取り、お礼を言う。
「ありがと、おばあちゃん」
ふーふーとお茶に息を吹きかけて飲みやすい温度にして、こくりと舌で味わって飲む。飲み終わったら、私は湯呑みを手におばあちゃんがいる台所に行く。
「おばあちゃん、朝ごはん作るの手伝うよ」
卵焼きを焼いていたおばあちゃんにそう声をかける。
「あらゆうちゃん。いいんだよ、これはおばあちゃんの仕事だからね」
おばあちゃんは優しい笑みを浮かべてやんわりと断るけれど、私は気にせず冷凍庫から魚を取り出した。
袋から取り出し、コンロに私とおばあちゃん二人分の魚を並べて焼き始める。
「ゆうちゃん、本当にありがとうねえ」
「ううん、これくらいどうってことないよ」
私は少し照れくさくなって、おばあちゃんから視線を逸らした。