ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい


 寒いのなら、すればいいじゃないかと言われてしまうかもしれないけど、あいにくまだ今年用の手袋が完成していないのだ。


 おばあちゃんに教えてもらいながら一生懸命に縫っている最中だ。

 私の手先が不器用すぎて、おばあちゃんが作るよりも余計に時間がかかっている。


 私の手作業を見ているとイライラが募るばかりだろうに、おばあちゃんは優しげな表情で見守ってくれる。

 私は毎日、そんな優しいおばあちゃんの隣で暮らしている。


 いつも通りの日常を少しずつなぞる中、今日はいつもと違うことが一つだけあった。


 いつもは私以外誰もいないはずのバス停に、温かそうな黒色のダウンを着た男の子が一人、静かに佇んでいた。

 近づいていくと、その子と一瞬目が合った。
 すぐに逸らされたけど。


 私は少し訝しく思いながら、その少年の隣に立ってバスを待つ。


 さっきからチラチラと見られている気がするけど、無視だ。

 バスの運行状況を聞かれても私には答えられないし。


 私の隣に並んでバスを待つ少年が今度はそわそわし始める。

 私はそれに眉をひそめた。

 その挙動不審な様子に失礼ながらも苛立ちを覚える。



 何か言いたいことがあるのなら、早く話しかければいいじゃない。

 そんなイライラとした焦燥感が募る。


 少年は未だに私に視線を送り続けている。



「……あの、さっきから何ですか」



 耐えきれなくなった私はついに自分から声をかけた。

 私がそちらを向いたことで、ビクッと肩を震わせて驚いたその少年。

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