ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい
私の隣に並んでバスを待つ男の子が今度はそわそわし始める。私はそれに眉をひそめた。その挙動不審な様子に失礼ながらも苛立ちを覚える。
何か言いたいことがあるのなら、早く話しかければいいじゃない。
そんなイライラとした焦燥感が募る。男の子は未だに私に視線を送り続けている。
「……あの、さっきから何ですか」
耐えきれなくなった私はついに自分から声をかけた。
私がそちらを向いたことで、男の子はビクッと肩を震わせて驚いた表情をした。
私はその人と無理やり目を合わせて、顔をじっと見つめた。その瞬間、想像以上に整っていた顔が視界に映る。色白の頬に切れ長の目が特徴的な綺麗な顔立ち。
凛々しい眉が綺麗に弧を描き、高い鼻がより一層顔全体のパーツの配置の良さを際立てている。
男の子の髪は、朝露に反射して美しく銀色に煌めいていた。
……この人の髪、何て言うか───白銀だ。
周りの雪景色に溶け込んでいて、ちゃんと見るまでは気づかなかった。これまでの人生の中で一度も見たことがなかった髪色。人口色でもない、自然なその白。
「うわ、美し」
思わずそんな声が漏れ出る。
私があまりにもジーッと見つめ過ぎていたからだろうか。少年の顔がみるみるうちに赤く染まっていく。