ひとりぼっちの夜に、君を照らす月をかじりたい


「え、?」

「初対面だから、付き合えないって理由じゃ俺は引けない。俺のことが生理的に無理とか、嫌いとかなら仕方ないけど」


さっきから、目の前の男の子が何を言っているのかさっぱり分からない。


私、告白は丁重にお断りしたよね……?

馬鹿みたいに再確認してしまうほど、男の子の言い分はめちゃくちゃだ。これは、一筋縄ではいかなそうだな。


「……友達としての付き合いだったら、いいよ」


一瞬で脳内をフル回転させ、たどり着いた答え。今の私に提示できる最大限の条件はこれだけだ。


「それって、俺と一緒にいてくれるってこと?」


期待半分、不安半分のわんこみたいな瞳に見つめられ、私はぎこちなく頷くしかなかった。

……若干語弊があるような気もしなくはないけれど。


「ほんと、に……? やった、良かった」


一言一句、しみじみと呟く彼の心の中は、一体どうなっているのだろう。


「良かったって、……本当に訳分かんない」


私に告白した理由を教えてくれない彼に、わざと愚痴のようなものをぶつける。


そんな私に視線をやった彼の表情は、何とも言えない複雑さで満ちていた。


「あ、……ごめん。一人でこんなに盛り上がって。君に告白した理由も話せないのにね」

「……いや、私の方こそごめんなさい。今のは、あなたを困らせるだけの発言だった」

「いや、君が謝る必要は全くないよ」

< 8 / 25 >

この作品をシェア

pagetop