一生分の、恋をした
無菌室で、由羅からのメッセージを確認する詩。


ついつい笑みがこぼれる。



入院当初は病気の影響で発熱していたが、連日輸血と抗生剤等の点滴を受け、今朝には熱も下がり、だるさが少しおさまってきていた。


毎日検査や注射ばかり。


入院し始めの頃は熱でぼんやりとしていたが、意識がはっきりした状態で改めて見ると、管だらけになってしまった自分に少し気分が沈む。


ため息をついていると、ドアが開いた。


「入るぞ」



ガウン姿の綾人が入ってきた。


その姿を見て、詩が少し笑う。


「何がおかしい」


「だって、何度見ても、その姿、見慣れないんだもん」


「お前の体を守るためなんだぞ。もっと病人の自覚を持て」


「はーい。ごめんなさーい」


苦笑いをする詩。


「それはそうと、治療方針が固まった。今日から病気を根本的に治すための、抗がん剤による化学療法を始める」


「嫌だな…でも、頑張る」



抗がん剤の副作用に苦しんでいた母親の姿を、嫌でも思い出してしまう詩。


でも、また学校に戻るためにも、弱音を吐いてる場合じゃない。


「一緒に頑張ろうな」


「うん」



─ここからが、本当の闘いだ。詩の体、どうか耐えてくれ。


進行の早い急性白血病を治すための、大量の抗がん剤を用いる、副作用も強い治療。


そこから、詩にとって地獄の抗がん剤治療が始まった。








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