一生分の、恋をした
「俺と住め」


「…え?」


状況が飲み込めず、言葉を失う詩。



「体調不良を隠そうとするだろ。昨日だって、夜少し喘息が出てたのに隠してた」


「そんな…こと…してないもん」


綾人の大きな目にジロリと見られ、詩は途端に目を合わせられなくなる。


「バレバレだ。そんな無理をするやつに一人暮らしなんてさせられない。白血病の他に、喘息のコントロールもあるし、俺の家で一緒に住んで、しんどくなったらすぐに俺に言え。」


「そんな…でも…私がいたら迷惑かけるでしょ…綾人の負担になるよ」


「一人暮らしさせて、いつお前がまた死にかけで運ばれてくるかとヒヤヒヤさせられる方が迷惑。心臓に悪いから、2度とあんなことはごめんだ。」


「ごめんってば……」


少し気まずい気持ちと、心配かけて申し訳ないという気持ちが混じる。


「断ったらどうなるの…?」


「一時退院は許可できない」


できれば、一時退院中に高校に通いたい。

みんなにも会いたいし、出席扱いにしてもらうためにたくさん提出しないといけないレポートの内容について、先生への質問もある。


内部進学で大学に入学できることは決まってはいたが、まずは確実に高校を卒業しないといけない。


だけど、綾人がそんなことを考慮してくれるような甘い人間ではないことを、この入院生活で十分すぎるほど分かっていた。


詩は覚悟を決めた。


「…わかった。じゃあ…お世話になります」


「よし、決まり。じゃあ月曜に退院して、詩の家に一緒に荷物を取りに行ってから、俺の家に帰ろうか」



突然強引に決められた同居生活。

兄のように育ってきたとはいえ、ドキドキする。


しかし、恋人となった綾人と、久しぶりに無菌室を出て会える。


何より、一緒の家に住めるんだ。


喜びの方が上回りつつも、緊張しながら退院までの日を過ごした。





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