一生分の、恋をした
詩の家を出て綾人の家に向かう2人だったが、綾人が一人暮らしをするマンションは、詩の家から目と鼻の先だった。


「一人暮らしを始めたとは聞いてたけど、綾人がこんな近くに住んでたなんて知らなかった」


「お前がアパートで一人暮らしを始めてから、こっちに引っ越したんだ」


「…?なんで?」


「何かあった時に、遠くに住んでたら助けてやれないだろ」


「ほんと、過保護すぎる…」


「まぁ、結局、すぐに病気に気づいてやれなかったし、高校で倒れさせてしまったけどな」


「何度も言ってるけど、それは綾人のせいじゃない」



これまで知らなかった綾人からの想い。


嬉しさと恥ずかしさを感じながら廊下を歩いていると、綾人が歩みを止め、玄関のドアを開けた。


「ここが俺ん家だ」


「お邪魔します。わ、広い…」


詩はキョロキョロしながら、恐る恐る中に入った。
想像していた"一人暮らしの家"というものと違い、中は家族でも暮らせそうな広さだった。


「ここが使ってない部屋だから、詩が自由に使うといい」

「私の部屋、あるんだね…ありがとう」


使っていないと言いながらも、埃ひとつ落ちていない、ピカピカの部屋。


空気清浄機もある。


息が苦しい時の、酸素ボンベまで…


私がこの部屋で安心して暮らせるように、忙しいなか頑張って整えてくれたんだろうなと、綾人の優しさに触れた詩だった。


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