一生分の、恋をした
ある日の夜中の病室。


綾人は今日も詩の病室に付き添っていた。


今日は副作用が特にひどい日で、ぐっすりと眠ることができない詩がうめき声をあげるたびに、手を握り、背中をさする。


手袋越しに、綾人の確かな温もりを感じる。


「綾人…大好きだよ」


「俺もだ」


「キスして…」


「…ごめんな。この部屋から出たらな」




ガウン姿でマスクをつけないと入室できない無菌室。


恋人同士なのに、直接触れ合うことはできない。





昼間はかなり我慢しているのだろう、いつも小さな体をさらに小さくさせて、苦しみを堪えている。



─毎日無理させてるな。苦しい思いばかりさせて。


どうか、薬よ効いてくれ。


決して楽観視できない病状に、祈ることしかできない自分。


再発を伝えるべきか、そうではないのか。



治療をやめたがっているのに、無理に続けさせてしまっているのではないか。




葛藤の日々が続いた。




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