一生分の、恋をした
2クール目の抗がん剤治療を終えた詩。
しかし、血液検査の結果、寛解に至っていないことがわかった。
詩には「血液検査の結果があまり良くないため、治療を継続しよう」とだけ伝えられた。
─気を遣ってくれてるんだね。
綾人、1人で背負わなくていいのに。
ごめんね。
自分のことより、詩は綾人の心を心配していた。
そんなある日、さらなる試練が詩を襲った。
無菌室内で輸血を受けていた詩は、綾人に買ってきてもらった本を読んでいた。
その時、胸が急に痛くなった。
「カハッ…なんか…くるし…」
ナースコールに手を伸ばし、ボタンを押す。
「詩ちゃん?どうしたの?」
スピーカーから、萌音の声が聞こえてくる。
「ハァ、ハァ…むねが…くるしい…」
詩が必死に声を絞り出す。