一生分の、恋をした
入院
ピッピッピッピッ
心電図の音が聞こえる。
急に襲ってきた、明るい光と、頭の痛み、体のだるさで目が覚める。
ここは……?
何があったんだっけ…?
それにしてもだるい…眠い…
再び詩がまぶたを閉じようとしていた時、看護師が近づいてきた。
「…!あ!よかった、目が覚めたんだね、先生呼んでくるね」
看護師が離れてすぐ、誰かが小走りで近づいてくる音がする。
「詩!」
心からほっとした表情で詩の名前を呼ぶ、1人の長身の男性医師。
立花 綾人( たちばな あやと)は、現在28歳で七岡総合病院で血液内科医をしている。
詩が母親を亡くして一人暮らしを始めるまで、家が隣同士だった兄のような存在でもある。
詩のことは、2歳の頃から知っている。
自分に懐いてくれる詩のことを、実の妹のように可愛がってきた。
詩が一人暮らしを始めてからは、月一回の通院日に少し顔を出してもらう程度しか会えなくなったが、いつも詩の体調を気遣っており、詩にとっても兄のような存在だった。