愛に落ちて、恋をした。
「川田玲奈です、誰にも興味無いので、話しかけないで下さい、よろしく」

謎の転校生が現れたのは、7月初めの事だった。

静かに過ごしたい俺は、地味なフリをして髪の毛をノーセット、前髪も目にかかるぐらいの長さで、自分のことを僕と言って大人しく過ごせればいいと思ってた。

それなのに。

謎の少女が転校して来て、次の日。


「黒柳くん、付き合ってくれない?」

「っ…は…?」

転校生の川田玲奈は、地味なフリをした僕の席の前に立って、しっかりと僕の方を向いて、言った。

「聞こえない?付き合ってって言ってるの」

――――――川田玲奈と付き合う?

この俺が?

恋人同士になるってこと?

彼女は、誰も寄せつけないオーラを放ちながら転校して来たことで有名だ。

あの場にいた誰もが、普通じゃ無いと、そう思った。

そんな彼女が、付き合って欲しいと言った。

「僕、ですか?何かの間違いじゃ…」

「メアド教えて、詳しいことは連絡するから」

「僕まだ返事も何もしてないですけど…?」

「早くして、無駄な時間を過ごすのは嫌いなの」

彼女は返事も何もしてない俺を急かした。

言われるがままスマホを出すと、メールアドレスと電話番号を勝手に登録され、交換させられた。

「はい、ありがとう、じゃまた」

そうして、すたすたと帰宅していく川田玲奈は、注目の的だった。

それから彼女が教室から過ぎ去っていくと、次に注目を浴びたのは、当然俺だった。

なんのために地味なフリをしてるのか、それは注目を浴びないためなはずなのに、これじゃ全く意味が無い。

「あはは、困ったな…間違いだって知らせなきゃ」

そう言い放って、席を立ち、急いで彼女を追いかけるのだった。
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