愛に落ちて、恋をした。
「ったく、なんで俺が走らなきゃなんねぇんだよ」
走っていくと、下駄箱まで遠いクラスのせいか、彼女はまだ廊下を歩いていて、声を掛ける。
「川田さん。やっぱり何かの間違いじゃ無いかな」
俺の声を聞いて後ろを振り返る彼女は、こう言った。
「いいえ、間違いじゃ無い。ただ勘違いしてるのはそっち、私はただ夏祭りに付き合って欲しかっただけ。勝手に恋人同士になった気になられても困るから」
なんだ、付き合うってそっちの話か。
話しながら歩き出していた俺らは、いつの間にか下駄箱についていた。
「そ、そうなんだ、そうだよな」
まてよ、夏祭り?
「じゃ、そういう事だから。あとはメールで」
そう言って靴を履き終えた彼女は、昇降口を出て行った。
待ってくれなんて言う隙は無かった。
彼女の歩くスピードは、意外にも早かった。