聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
※
「書店はすぐそこだから徒歩で行こう」
歩き始めると、ルーカスはまた説明を始める。
「創業100年以上の老舗で、王都一の蔵書数を誇るんだ」
(それも情報誌の紹介文通りだわ)
しかし、そう指摘して恥をかかせるには野暮というもの。
マルティーナは笑顔で頷くだけに留めておいた。
「マルティーナお薦めのアンダルイド古語辞典はどれだっけ?」
「ええっと……あったわ。これよ」
「ねぇ、この本!」
「図書室でなかなか借りられない人気の! あっ、こっちのも!」
書店ではルーカスたちも物色していて、ほしい本を見つけていた。
「重いだろ。持つよ」
会計を済ませると、ウーゴがパウラの買った本を持ってあげた。
「気が利くじゃない」
(ウーゴさんってパウラのこと、よく見てるし、ごく自然に気にかけてるのよね)
ウーゴは肘でルーカスを突いて、『ほら』とマルティーナの手元に視線を送った。
「あっ、ああ。マルティーナのは僕が……」
ルーカスもマルティーナの分を持ってくれた。
仕方なくとか、嫌々な空気はない。
ただ慣れていない感じがしただけだった。
(持ってもらうほうの立場だものね)
「ありがとうございます」
マルティーナがお礼を言うと、『このくらいのこと』と顔を赤くした。