聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました



「書店はすぐそこだから徒歩で行こう」

 歩き始めると、ルーカスはまた説明を始める。

「創業100年以上の老舗で、王都一の蔵書数を誇るんだ」

(それも情報誌の紹介文通りだわ)

 しかし、そう指摘して恥をかかせるには野暮というもの。
 マルティーナは笑顔で頷くだけに留めておいた。

「マルティーナお薦めのアンダルイド古語辞典はどれだっけ?」
「ええっと……あったわ。これよ」
「ねぇ、この本!」
「図書室でなかなか借りられない人気の! あっ、こっちのも!」

 書店ではルーカスたちも物色していて、ほしい本を見つけていた。

「重いだろ。持つよ」

 会計を済ませると、ウーゴがパウラの買った本を持ってあげた。

「気が利くじゃない」

(ウーゴさんってパウラのこと、よく見てるし、ごく自然に気にかけてるのよね)

 ウーゴは肘でルーカスを突いて、『ほら』とマルティーナの手元に視線を送った。

「あっ、ああ。マルティーナのは僕が……」

 ルーカスもマルティーナの分を持ってくれた。
 仕方なくとか、嫌々な空気はない。
 ただ慣れていない感じがしただけだった。

(持ってもらうほうの立場だものね)

「ありがとうございます」

 マルティーナがお礼を言うと、『このくらいのこと』と顔を赤くした。
< 115 / 220 >

この作品をシェア

pagetop