聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました



 馬車に荷物だけ預けると、続いては寝具店へ移動した。

「枕が合わないとかか? ここの店の枕は、綿花栽培が盛んなローデス地方産のコットンを使用していて、安眠できると評判なんだ」
「枕ではなくて、カバーがほしいんです。真っ白だと味気なくて」
「そうか。それもここなら気にいるものがあると思う。なにせ数年前に新進気鋭のデザイナーを採用して、ポップな柄もラインナップに加えたはずだから」

(ああ、絶対そうだ!)

 マルティーナは確信した。

(私たちのために、ルーカス様も私たちが読んだのと同じ情報誌を読んで勉強してきたんだわ)

 マルティーナはルーカスのうんちくに口を挟むことはせず、笑うのを堪えて相槌を打ちながら聞いた。
 口から出ていかないように押し留めた笑いは、その間ずっとマルティーナの胸をくすぐり続けていた。

< 116 / 220 >

この作品をシェア

pagetop