聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
「名は、マルティーナ・ロメーロといったか?」
「……はい」
「あそこはルーカスの好きにすればいい」
そう言ってくれるだろうとわかっていた。
しかし、だ。
(僕とマルティーナは、父上が思っているような間柄ではない!)
「家は伯爵家……だったか? 他国だから時間がかかるかもしれないな。身上調査員は早めに派遣しておくか……」
「はあ? 待ってください。マルティーナはただの友人です! それもようやくなれたばかりの……」
ルーカスは言っていて哀しくなってきた。
「無駄になったとしても別に構わないよ」
「ですが……」
「何か懸念事項でもあるのか?」
(……懸念?)
先ほどまでは、マルティーナとは何も始まっていないというのに、そういう相手を見つけてきたと勘違いされてしまったことに大いに焦っていた。
けれど、誤解だとしてもマルティーナが花嫁候補になりそうな今は、父親の指摘通り、確かに焦りよりも懸念のほうが大きくなっていた。