聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました



 ルーカスまで制服である必要はないはずなのに、制服を着ていた。

(合わせてくれたんだわ)

 お礼を言ったところで、素っ気ない返事をされることが想像できた。
 それでも一応伝えてみることにする。

「ルーカス様まで休日に制服を着てきてくださって、ありがとうございます」
「いや、1番楽だからだ。それに生徒がふたりしかいなのに、片方だけ私服というのも浮いてしまうから」

 入学して半年、ルーカスの不器用さを理解していた。
 マルティーナは『ふふっ』と笑ってしまった。

「えっ、何かおかしかったか?」
「いいえ、全く。ところで──」

 マルティーナは、試験結果の報告と進路相談をすることにした。

「君はルーボンヌに帰らなくてもいいのか?」
「いいんです」

 あの国にマルティーナの居場所はないのだ。

 出発の日の朝、母親からはこう言われてしまった。
 『アンダルイドでいい人を見つけたら帰ってこなくていい』と。
 それは即ち、『自力で恥ずかしくない嫁ぎ先を見つけるまで帰ってくるな』という意味だった。
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