聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
馬車が停車し、扉が開けられると、ルーカスは叫んだ。
「急病人だ! 到着早々だが、ベッドに寝かせたい」
マルティーナはルーカスに抱きかかえられて、客室に運ばれた。
目を閉じていても、それがわかった。
学院長とベルナル先生は先に到着していたようで、建物の中に入ると、ふたりの声も聞こえてきた。
「医師を呼びましょう」
「私が行きます!」
医師にどうこうできるとは思えなかったが、今のマルティーナにはベルナル先生を呼び止めることはできない。
すぐそばにいるはずのルーカスの気配も、次第にぼんやりしてくる。
その最中も絶えず入ってきていた誰かの想いは、このときまでに記憶へと変わっていた。
そして、マルティーナとその誰かとの境界が曖昧になっていく。
まるで乗っ取られるかのように。
マルティーナはいつの間にか、その誰かになりきっていた──