聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 アーロンの部屋に浄化と祝福の魔法をかけ始めたのは、純粋にアーロンのことを心配してというのもあったが、それだけではなかった。
 いつかヴァレリアのかけた魔法に気づいて、アーロンのほうから声をかけてきてほしいと願っていた。

 でも、もう時間切れのようだ。
 ヴァレリアは最後の神聖魔法をかけるべく、祈り始めた。
 自分がかけられる全ての神聖魔法をここに残していこう。
 自分がいなくなっても、この宮殿がいつまでもアーロンにとってしあわせな場所となるように。
 自分にとってそうであったように。

 今までにないほど神の存在を近くに感じた。
 けれど薄れる意識の中で、ちらりと考えたのだった。

 全ての神聖魔法を置いていきたいと思ったけれど、もしもアーロン様にもう1度会えるチャンスがあるなら、あの疲れを癒してあげられるだけの治癒魔法はほしいかも、と──

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