聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 マルティーナがルーカスの顔をまじまじと見てくる。

「な、何だ?」
「あれは、アーロン様ではなくルーカス様……でした? 治癒魔法をかけたのはヴァレリアではなく、私?」

 まつ毛の1本1本まで識別できるような至近距離で見つめられ、ドキマギしてしまう。
 
「自分が実際に体験していると錯覚してしまうほどリアルな夢だったので、ヴァレリアと私の境界が曖昧になってしまって……今混乱しています」

 それは理解できた。
 ルーカスも、アーロンとルーカスのどちらが経験したことだったかわからなくなることがある。

 これまでずっと、アーロンのしてきたことをマルティーナに謝罪したいと思ってきた。
 しかし、それも不要なほど、ヴァレリアはアーロンのことを理解してくれていたのだ。
 アーロン自身以上に──

 憑き物が落ちたように、清々しい気持ちになっていた。

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