聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
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最初に1歩入った瞬間から、マルティーナは自分に与えられたその部屋を大いに気に入った。
寮母か清掃員かがあらかじめ窓を開けておいてくれたのだろう。
窓から心地よい風が入ってきていた。
レースカーテンが床板に作り出した影絵は、軽やかに揺れている。
きちんと拭かれていて埃のない机と本棚、それから衣装棚は、年季こそ入っているものの、それがかえって温もりを感じさせる。
唯一、ベッドのシーツと枕カバーだけは好みでなかった。
愛想の欠片もない真っ白さも、ぶ厚くてゴワゴワとした硬い肌触りも。
(いずれ街に出かける機会もあるだろうから、そのときに好きなシーツを買ってこようかしら……)
そうすれば、この部屋はパーフェクトだ。
想像するだけでワクワクした。