聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 ヴァレリアもまた、自分に負担をかけさせまいとしていて、だからといって優しく声をかけてくれるわけでもない、そんな不器用なアーロンのことが好きだった。

 ヴァレリアと同化しているから、アーロンに見えるルーカスを好きだと勘違いしているのかと思っていた。
 あるいは、ルーカスが自分のことを好きなように見えてしまうから、好きになってしまったのかもしれない、と。

 けれど、違った。
 何よりアーロンはこんなふうに笑いかけるような人ではなかったではないか。

 それにブランカ宮殿を訪問する前からこの気持ちは、マルティーナの中に存在していた。
 放課後の研究会でも、商店街での買い物のときも、試験勉強中でも──

(アーロン様ではなく、ルーカス様が好き。そして、この恋は私自身のものなんだわ)

 自分の中で今まで認められなかった気持ちを初めて肯定した。

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