聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
部屋の点検が終えたマルティーナは、トランクケースを開け、祖国から持参した物を出し始めた。
とそのとき、ドアの向こう側から、何か大きなものが倒れたような音がして、悲鳴が聞こえた。
(あの声は!)
マルティーナは素早く立ち上がった。
そして、その勢いのまま廊下へ出て、斜向かいの部屋をノックした。
「パウラ? どうしたの?」
「お願い、助けて!」
「っ! 失礼するわ」
マルティーナはすぐさまノブをつかんだ。
鍵はかかっていなかった。
「きゃっ、大変!」
パウラが本棚の下敷きになっている光景が飛びこんできた。
マルティーナは慌てて駆け寄った。
「本棚を動かしたかったんだけど、意外と重くって。空っぽだから、もっと軽いと思ったんだけど。目測を誤っちゃった……」
「少しだけ待っててね」
マルティーナは魔法と人力の両方を使って、本棚を起こした。