聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

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 ドアがノックされたのは、マルティーナが王宮メイドに手伝ってもらって着替えを済ませ、ひと息ついているときだった。

「君の支度が済んだと聞いたんだが、入ってもいいだろうか?」

 喉がキュッと締まった気がした。

(緊張する必要なんてないはずでしょう? このドレスは一緒に選んだんだから)

 胸に手を当てて深呼吸した。
 手のひらが強い鼓動を感じる。

「もう少しあとにしたほうがいいか?」
「いっ、いいえ! 大丈夫です」

 答えながら、素早く姿見をもう1度確認した。

(大丈夫、大丈夫)

 華美な装飾はなくシンプルだが、ひと目で一級品だとわかるドレス。
 それに、メイドによりきっちりと結い上げられた髪。
 薄くメイクもしてもらったお陰で、意志の強そうな印象を与える眉と目──

 自分ではないみたいだ。
 だからこそ恥ずかしい。
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