聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 この面会の準備だってそうだ。
 ドレスに指輪にと飾り立てられた。

(さらに『イエス』とだけ言えだなんて……)

 たくさん考えてくれてのことだと、簡単に想像できる。
 でも、そのたくさん考えたことも説明してほしかった。
 当事者なのに蚊帳の外みたいで、やはり淋しさを感じる。

 もっと遡れば、自分はアーロンなんだと言ってくれればよかったのに、と思う。
 そのたったひと言があれば、あれほど悩まなくても済んだ。

「ルーカス殿下、そろそろお時間です」
「わかった」

 ルーカスは腕を曲げて、マルティーナに視線を送った。
 前世でも、夫婦で王室行事に参加するときに繰り返してきた動作。
 自分は黙って、この腕に手を乗せるだけでいい。

 マルティーナは、ヴァレリアだったときと同じようにエスコートされた。
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