聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
(でも、今の私はマルティーナだわ。ルーカス様とは学友の……)
今このときは学院の外にいるから、平素の無礼講は通用しないだろう。
それでも対等な学生同士の関係が、完全になくなりはしないはずだ。
「ルーカス様は言葉が少なすぎます。今後は事前にもっと話をしてください」
抗議されるとは思っていなかったようだ。
少し驚いている。
「……ああ、すまなかった」
「そういうところ、相変わらずというか、少しも変わらないですね」
「相変わらず……?」
ルーカスと知り合って、まだ1年弱だ。
にも拘らず、『相変わらず』などと、まるで旧知のような言い方をしたのは、もちろん故意にだ。
「マルティーナ、それってどういう……」
「さあ、もう行かないと。急ぎましょう!」
「マルティーナ!」
ちょっとした仕返しだ。
(ルーカス様も、話してもらえない気持ちを少しくらい味わえばいいんだわ)
ルーカスの腕を引っ張って歩き始めた。