聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

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 面会は、王宮内にある小ホールで始まった。
 王国議会もここで開かれるという格式を感じさせる空間で、空気までキュッと締まっている気がする。

 ずっと憧れ続けていた世界の頂点に立つ人物が、今マルティーナの目の前に座っていた。
 白い長髪はひとつに束ねられていて、顔に刻まれた深い皺が厳格そうに見せている。

 遠目にしか、その尊顔を拝んだことがなかった存在。
 それがすぐ近くにいる。
 にも拘らず、不思議なことに、特に思うことはなかった。
 もちろん、この先の面会の行方に、大きな不安を感じていた。
 けれど、大神官その人に対しては何もないのだ。
 尊敬も畏怖も、あるいは嫌悪のような感情も──

 ヴァレリアの能力を継承した今となっては、大神官の能力を推し量ることができるようになっていた。
 それがどの程度正確なのかは不明だが、大きくハズしてはいないはずだということまでわかる。

(ということは、今の私は大神官様とほぼ同等……ということ?)

 冷静にヴァレリアだった頃の業績を思い返せば、おかしなことではない。
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