聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 ルーカスはそれから声を張った。

「おかしなことを言われる」

 それは力強く堂々としていて、目が覚めるようだった。
 目眩も治ってしまった。

(そうだわ、しっかりしないと!)

 アンダルイドに残りたいのなら、ここが踏ん張りどころのはずだ。

「何ひとつおかしいことはありませんよ」

 笑顔は崩れなかったが、警戒したのが伝わってきた。

「幼少期にマルティーナ嬢がオルランド・バジョ卿と婚約したのは事実です。が、その後バジョ卿は別の侯爵令嬢と婚約されている。それとも、ルーボンヌ神国では重婚が認められているのですか?」
「いいえ……そのようなことはありませんが……」
「それならば、二重婚約というのも当然ありえませんよね。でなければ、まさかバジョ卿はふたりの令嬢を両天秤にかけている、ということでしょうか?」
「そ、そのようなことは……」
「ということは、侯爵令嬢との婚約前に、マルティーナ嬢との婚約は解消されたはずです」

(ルーカス様がどうしてそこまで知っているの?)
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