聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

33

 マルティーナはルーカスと共に、大神官一行を見送った。
 彼らは表面的には平静を繕っていたが、内心では意気消沈していた。

 元・婚約者もその中に含まれていたはずだが、誰がそうなのかは判別できなかったし、しようとも思わなかった。
 マルティーナにとっては、一切合切がもはや過去になっていたのだ。

「……はあ。今さらながら、手が震えてきてしまいました」

 一行が王宮を出ていったあとで、マルティーナは脱力しきって、そう言った。

「ほら、見てください」

 両手を掲げて、ルーカスに見せびらかす。

「あっ」

 左の薬指のつけ根が光るのが目に入った。

(これはすぐに返さないと……)

 ヴァレリアが所有していた指輪だからか、やけに指に馴染んでいた。

(だけど、私はヴァレリアではなく、マルティーナなんだから)

 震える指先を指輪にかけた。

「それにしても、この短期間でここまで準備してくれていたことに驚きました。私の元・婚約者のことまで調べてくれていたなんて」

 指先に力が入らず、もたついていた。

 そんなマルティーナの手を、ルーカスが両手で包むようにした。
 始め、震えを止めようとしての行為だと思った。
 しかし、違った──
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