聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
マルティーナも不思議に思った。
(そうよね、何の問題もなさそうだけど……)
「臭みを消すために、クセの強いお酒をどばどば振りかけるのと、とんでもなく辛いスパイスを使うこと!」
「あと一緒に蒸すのに使う野菜は苦い!」
「タローロと野菜の蒸し料理のせいで、さっそく帰国したくなる留学生が出るんだって」
けれど、パウラに怯んだ様子はなかった。
「私、辛い料理大好き。それに肉より魚派。いける自信がある!」
『くくっ』と笑った。
「だけど、ウーゴは間違いなく洗礼を受けるだろうなー。絶対教えないでおこうっと」
ひとりが、さっきから反応の乏しいマルティーナの顔を覗き込んできた。
「マルティーナは心配?」
「えっ? ううん、そうではなくて……似たような料理をどこかで食べたことがある気がして」
それもずっと昔に──
はっきりと憶えているわけではない。
けれど、説明を聞いているうちに、舌がその記憶を取り戻していくような奇妙な感覚を覚えた。