聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

6

 もはや女子寮の中だ。
 安心していい。
 にも拘らず、マルティーナは部屋に入るとすぐさまドアを施錠した。

 するとようやく気が緩み、疲労が一気にのしかかってくるのを感じた。
 荷解きはすでに済んでいて、自分の持ち物があるべきところに納まっているからなのか、すでに自室という感覚がある。

 ベッドに勢いよく倒れこんだ。

(はあ……初日から色々とありすぎたわ……)

 ダニエラと別れの挨拶をしたのは、もう何日も前のことのような気がする。

 初日から新しい出会いがあった。
 パウラに、ウーゴ、寮母、食堂で話した4人、それから──

 泣いているマルティーナを気遣って、あれきりパウラたちが何も訊かないでいてくれたのは有り難かった。

 マルティーナは仰向けになって、天井の一点を見つめた。
 そうしているうちに、次第にまぶたが下りてきた。
 意識がゆったりと宙に浮かび始める。
 漂うまどろみの中に映しだされたのは、とうにマルティーナの手からは溢れて落ちてしまった過去の出来事だった──
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