聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

9

 入学式が終了し、新入生たちは三々五々ホールから移動し始めた。
 このあと、休憩を挟んで各教室に集合することになっている。

(あっ、今ならウーゴさんに話しかけられそう)

「少し話をしたい人がいるんだけど」

 マルティーナはウーゴを呼び止める前に、オリビアに断りを入れた。

「少しなら待ってるけど?」
「よければ、先に行っておいてほしいわ」
「わかった、そうするね」

 自分からそうしてほしいと望んだくせに、その後ろ姿が見えなくなった途端に心細くなった。

(私のせいで、ウーゴさんが王族に睨まれることになっていたりでもしたら……)

 そう思うと不安が押し寄せ、緊張で強張る。
 マルティーナは胸に手を当て、ひと呼吸置いてからウーゴに声をかけた。

「ウーゴさん」
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